昨晩は疲れていたにも関わらず、刺激を受け過ぎて頭が冴えてしまい、あまりよく眠れなかった。6時に諦めてベッドから抜け出し、荷物をまとめた。
カサ・バトリョで毎朝10名だけ8時半から見学出来る、というツアーに申し込んでいた。早めに着くようにアパートメントを出た。午前8時20分頃、iPhoneのGPSに登録した場所に着いたが、それらしき建物がなかった。「間違えたんだ。」と気づいた。でもGPSで探してメトロに乗って行くと絶対間に合わない。焦りながら辺りを見渡すと、ちょうど信号待ちをしているタクシーを見つけた。必死で駆け寄り、乗せてもらった。幸いな事にそんなに離れていなかったみたいで、5分くらいで到着した。
時計を見ると8時28分だった。ほどなく係の人がドアを開け、建物の中へと誘導された。オーディオガイドを受け取り、すぐに聞き始めた。
内装はサグラダ・ファミリアとグエル邸を見た後だったので、最初に見た印象はシンプルなデザイン、という事だった。グエル邸にはクライアントからの要望により、お金に糸目をつけずに内装を施したそうで、当時の最高の技術と材料を使った豪華なものだった。しかしながら、カサ・バトリョへも控えめながら、持ち得た高品質のデザインが使われていた。
私が見たかったのはここの大広間だった。サントリーローヤルのガウディ編のCM後半では、ここで頭の大きな女性が踊っていたからである。他の場所はそこそこに、真っ先に大広間へ入室した。CMではガラスに加工していたみたいで、かなり暗い印象だったが、とても見晴らしがきく、気持ちの良い空間となっていた。
各部屋の壁はクリーム色や白に塗られていて、暗い印象の部屋は、キノコ型の暖炉がついた踊り場くらいしか覚えていない。
ここにも、他のガウディの建築で見られた、自然光を取り込むため、採光の窓をさりげない場所に作ったり、形の違う柱をずらし前後に取り付けて、空間を出来るだけ大きく見せるという工夫がされている、とオーディオガイドで言っていた。
窓の持ち手もガウディ自らとった型を使って鋳造したオリジナルだそうである。
隣の部屋に繋がるドアを開け放つと、チャペルになるように作られている。これはグエル邸でも同じだった。
そこから一旦出て、階段を最上階のすぐ下の階まで上がった。そこはリネン室で、洗濯のための水槽が当時のまま残っていた。
そして最上階は広いホールのような作りになっていた。生物の胸部の中にいるような雰囲気の梁が、漆喰で肉付けをしたように覆っていた(龍の腹の間と言われているらしい)。こういったカーブは直線よりも丈夫だから、という理由もあるそうである。
さらに屋上へ続く螺旋階段があった。
屋上にはモザイクをあしらったオブジェ/煙突が立っていた。
お弟子さんの作品だそうである。
スレートが魚の鱗のようである。
屋上から階下に続く入り口の隣に、貯水槽があった部屋へ通じるドアがあった。
今は変な音楽が流れ、ちょっと新興宗教の祭壇みたいな設えになっていた。
元のメインの階段へ戻った。建物の内側にはびっしりとタイルが貼られている。水のイメージだそうで、上部は鮮やかな青いタイル、それが下方に行くに連れて徐々に薄くなっていく。これは光の量に合わせて、色を調節したからだそうである。
今は誰も住んではいないそうである。