lulu_batailleの日記

日々起こった事、思った事を記していきます。

弓張月

このままだと夜明けを見そうである。
京都へ帰って来た明くる日に「春画展」を観に行った。永青文庫で一度観ていたが、妹に付き合うことにした。
会場に着いたのは12時前だった。既に混雑していたので、ショーケースを移動するごとに暫く並ぶことになった。永青文庫でもかなり混雑していたけれど、あちらの方が春画の展示には適していたのか、もっと観やすかったような気がする。
最初に展示された作品を見て、その状態の良さに驚いた。殆どのものが身分が高い武家の所有で、大切に保管されていたものだったからである。著名な絵師や彫師、そして摺師に贅を凝らした作品を作らせ、仲間内でこっそり見せ合って楽しんでいたそうである。
女性の肌が滑らかな陶器のようで、藤田嗣治の描く女性の肌を思い起こさせた。時折、人のプロポーションや体のパーツのポジションが無茶苦茶になっていたが、忠実に描く必要は特になかったのだろう。
江戸も後期になるにつれ、庶民のための艶本は在り来たりの話では売れなくなり、ストーリーや構成に趣向をこらすようになっていった。有名な「蛸と海女」を初めて見たが、北斎の文字の書き込みがすごくて笑ってしまった。
この展覧会の図録がまた素晴らしい出来で、作品の質感が忠実に再現されていて、装丁も美しい。あまり人の目につくところには置いておけないので、本棚の一番上にひっそりと入れている。それが春画の本来あるべき姿だからこれでいいよね、と思っている。