今は朝の９時過ぎである。いつものように晴れ間が出て来た。しかし空気は心地よい程度にひんやりとしている。龍玖の学校のあるサンセットはまだ霧につつまれているだろう。
スティッキーバンというパンを食べたくなった。しかし現金が３２セントしかないので我慢する。もうすぐブリブリの給料日だ。航空券でえらく損をしてしまったので、ぜいたくは出来ない。
先日ブリブリがたくさんイチゴを買ってきた。３分の１ほど柔らかくなっていたので、捨てるのはしのびずジャムを作った。ペクチンを入れなかったし、砂糖もあまり入れなかったのでおいしそうとはいえないが、まあなんとか形にはなった。トーストに塗ってスタジオへ持っていこう。
マグレットと久しぶりにスタジオで会った。サッカーのW杯が始まってから全試合テレビで観ているそうだ。それでスタジオへ来るのが遅いらしい。昼で帰ってしまう私たちとはすれ違いになっていたようである。贔屓のチームはどこ、と訊くと、「とにかくあまり知られていないチーム」と言っていた。だからすぐ負けてしまい、毎回試合を観る度新しいご贔屓チームを決めているとのこと。ブラジルチームのロナウドは、こちらでも不調の時に太ったせいだとかマスコミに叩かれていたそうだ。今はすっかり調子が戻ったんでしょう、と訊くと、でもデブはデブよ、と言われた。
夕方さて公園に行こうか、と龍玖に言っていたらイブォンヌさんから電話がかかってきた。今から遊びに行っても良いか、と訊かれたのでいいよ、と答えた。ディエゴちゃんが龍玖に会いたい、と言ったらしい。目を開けているマテオ君に会うのは４か月ぶりである。瑞麗より４週間遅く生まれたが、今では彼女より１キロほど重い。しかし体がひきしまっており、そのようには見えない。もうつかまり立ちもするそうだ。ディエコちゃんも９か月で歩いたということなので、マテオ君も早いだろう。瑞麗さんは彼のそばにいるとよけいに白くてぷよぷよに見える。お互いのおもちゃをなめ合ったり、マテオ君は瑞麗の指をなめたりしていた。
