yちゃんが数年前の展覧会の時に、織物用の糸をたくさん使った作品を見せていた。
Nさんと一緒にその作品を見て「この作品はいいですね。」と話した事を覚えている。白が基調となっていて、鈴とお団子のように丸まった糸が画面いっぱいに広がっていた。普段は荒々しさが前面に出ている作品が多いけれど、あの作品は大胆さよりもその繊細さが強く出ていた。
今回もインスタレーションで糸を使うから、以前使った鷹峯にある西陣織の糸を扱う店へ行くけど一緒に行きたいか、と誘ってくれた。面白そうなので、自転車でyちゃんについて行くことにした。
延々と続く登り坂を自転車で上がって行く。松野醤油から数分の所に、古い町家のお店があった。糸が表にぶら下がっていて、それを見ただけでこの坂道を上がって来た甲斐があった、と思ったのだった。
西陣織の工場が閉まると、ここに糸や織物が全部運ばれてくるそうである。yちゃん曰く、前は店の中が糸で溢れていたのに、今回はスッキリしている、と言っていた。
yちゃんの欲しかった金色と銀色の糸たちが奥の倉庫から出されて来た。手に取ると重みのある、しっかりとした糸だった。
お2人とも90歳を超えておられる。
私は暖簾がわりにしようと、帯の表地らしき反物のハギレを購入した。オマケに布の見本のハギレをいくつか貰った。
あまりにも美しいのでそのまま取っておこうかな、と考えている。