瑞麗さんはパリの中学校時代の友人のMちゃん宅に数日間お世話になった。
夏期講習を受ける高校のドミトリーへ入る前に、アーティストのYちゃん達の暮らすアパートメントで1泊することになっていた。
Mちゃん宅を出て、Yちゃん達のアパートメントへ移動する途中、瑞麗さんがFacetimeコールをしてくれた。MONOPRIXでの戦利品を見せながら「これ欲しい?」と聞いて来た。MONOPRIXのエコバッグが好きで、ボロボロになるまで使っていたのを知っている瑞麗さんは、新製品のバッグを見せてくれたのだった。
残念だけど私がフランスにいた頃に販売していたタイプのエコバッグは、生産中止になっていた。
「それを是非欲しい。」と答えた。
「後はゴーフルとバターかな。」と言って、瑞麗さんはiPhoneを高く自分に向けてかざし、スーツケースを押しながら歩き始めた。
そのスーツケースは私がまだ学生時代に購入したものだった。とても丈夫で20年以上経っても歪んだり、凹んだりせず活躍しているらしい。「いつか働く様になったら返すね。」と言っていた。
そのスーツケースには色々なものを詰め込んでは旅をしていた。
「大きなスーツケースは当分必要ないから急がないよ。」と答えた。
家へ置いておくより、瑞麗さんと共にある方がスーツケースの本分を発揮出来る。私は瑞麗さんが使っている方が嬉しく思う。