リビング・ダイニングルームに面している壁2面に、解体の時にとっておいた古い木板を他の木板と混ぜて壁に貼った。それの上に塗装として柿渋を塗るため、建築士さん、ヒショさん、アシスタントのIさん、妹と私の5人が集まった。木片は大工さんがとても良い感じに貼ってくれていた。古い木板だけでは足らず、新しい板も使用されていた。柿渋を塗らなくてもなかなか良い感じだったので、止そうか、という意見もあったのだが、新しい木板が他の板たちに馴染むように塗る事になった。
柿渋は「渋新老舗」という文政十一年創業のお店から購入したものだそうだ。今回のことで柿渋というものの存在を初めて知った。ペットボトルに入った柿渋を見ていると、ワインのような感じがした。匂いがすごい、と聞いていたのだが、希釈されていたせいかあまり気にならなかった。
柿渋が塗られた木材は日光があたると黒くなっていくらしい。建築士さんによると、渋新老舗では立派な看板があるらしいのだが、制作された当初張り切って重ね塗りをされたらしく、今では真っ黒になってしまったとのこと。気を付けていたのだけど、色付きがとても薄いのでついつい濃く塗りがちになってしまう。
古い板たちものこぎりの跡が表面に残っていたりして、滑らかではないものもあり、柿渋がうまく入り込まなかったりした。そうすると結果的に2度塗りになってしまった。
キッチン側の壁の上の方を残して殆ど塗り終わった。脚立に乗っても私には届かないので、後は日を改めて建築士さんがやって下さることになった。
大工さんが明かり取りの窓の周辺の囲いを作っている間、2階へ行き、手に軍手を填めてこそげを少しやった。すでに左官屋さんがやっていてくれたのだが、一番上のネズミ色の土壁がまだ残っているところを重点的に消していった。細かい粒子の土がぱらぱらと落ちて行くのを見て、本当に土なんだ、と納得したのだった。
建築士さんは以前「建材を味わう会」という催しを開催し、土壁をいろいろと味わったらしい。高価な聚楽はやはり上等な土の味がしたそうである。
ちなみに既に味わった建築士さん以外の4人で柿渋も味わってみた。ひたすら渋くて舌がなんだかざらざらした。決して美味しくはなかったけれど、自然素材の味っていいな、と思った。無垢の木板、土壁、柿渋と自然素材に囲まれて暮らす事が出来るのはとても贅沢だと思う。