龍玖の学校は、プロジェクトと言われる低所得者が住む公共住宅群のすぐそばにある。サンフランシスコの公立小学校にはNeighborhood Schoolと言われる、登録されている住所の校区に住んでいる子供たちが優先的に入れる学校と、Alternative Schoolと言われる校区が関係のない学校がある。龍玖の学校は１つめの校区が反映する学校なので、プロジェクトの子供たちが圧倒的に多い。龍玖のクラスは普通話のコースで特殊なため、プロジェクトからの子供は少ないが三人はいる。そのうちの一人である黒人の女の子はよくクラスの女の子に意地悪をされているらしい。何も言い返さず涙をこぼしていることもあるようだ。親が放任しているのだろう、彼女はずっと宿題を提出していない。ハッとするほどとてもきれいな顔立ちの女の子なので、私はクラスへ行くとつい目で追いかけてしまう。彼女は四人一組に分けられているグループで龍玖と一緒である。後の二人はちょっと小生意気な女の子たちなので、よく龍玖も怒っている。どちらもかなり気が強く、そのうちの一人は金髪碧眼の持ち主で少しアメリア嬢を思わせる。アメリア嬢同様、あまり笑わないしよく怒っている。もう一人は中国人と白人のハーフで、性格はまるっきり白人系アメリカ人だ。アメリア嬢に似た女の子の方は、ちゃんと挨拶をしてくれるし根はいい子だとすぐ分かるのだけど、もう一人の方は意地が悪そうで恐い。龍玖は何か彼女に言われるとすぐいきり立つので（単純な男の子だから）、勝手に言わせておくように、と言い聞かせている。彼女から喧嘩を買ってしまったら思うつぼである。ああいう子には関わらないのが無難だ。
